暑い季節になると、少し髪が伸びただけで 鬱陶しくなる。
だから つれあいに散髪をしてもらった。
六兵衛の頭髪は、20数年来 丸刈りが基本だ。
但し それは、春から秋にかけての季節限定であって
寒くなる冬が近づいてくると、根性なしの六兵衛は
丸刈りを そのまま伸ばして、次の春まで待つのである。

そんな繰り返しを ここ20数年続けてきた。
それは何より つれあいが、電気バリカンを握って散髪をして
くれるから なのだが・・。
歳を重ねる毎に、切り落とされる六兵衛の髪の色は
少しづつ白くなる・・。
前回の散髪は、少し暖かくなりかけた3月の中頃に
いつものように つれあいにしてもらったが
冬の間に長く伸びて 切り取った白髪の髪は
つれあいが 集めて袋の中に詰め、「針刺し」として
使っているという。

散髪が終わったら 即 風呂へ直行するためにパンツ一丁で
やや俯き加減に 丸椅子に座り、つれあいが刈る髪の毛が
六兵衛の足下に落ちてくる・・。
それは 遠い遠い60年も昔の 白黒の記憶を よみがえらせる・・。
六兵衛が子供の頃に暮らしたのは、店屋など一軒もない
小さな集落だったから、当然 近くに床屋などある筈もなく
休みの日を利用して父親が外で、手動のバリカンで
器用に散髪をしてくれたものだ。

とはいえ素人の父親が扱うバリカンだから
時には髪の毛が バリカンに挟まったりして
痛い思いをする事もあったりする。
今も、父親に散髪をしてもらっている その映像が
記憶の中にはっきりと残っており
遠い昔の なつかしい父親との一場面でもある・・。