スマホのアプリに保存した200曲 余りの古い流行歌を
イヤホンで繰り返し流しながら、六兵衛は散歩をする。
例えば 以前、歩きながら何気に聴き流していた古い流行歌が
例えば今日、その同じ流行歌を聴きながら歩いていたら
以前には ただ 聴き流していた その流行歌が、何故だか今日は
六兵衛の胸に強く落ちてきたりする事がある・・。
そのような事は これまでにも何度かあった。

三橋美智也さんが歌う『山は夕焼』という歌が それだ。
まだ戦前の頃の1934年(昭和9年)に、東海林太郎さんが
キングレコードから発売した この歌を、戦後になって
三橋美智也さんがカバー曲として歌っている。
『山は夕焼け』キングレコード・昭和9年(1934年)発売
作詞:岡田 千秋 作曲:田村 しげる 歌:東海林 太郎
東海林太郎さんが歌う『山は夕焼』
https://www.youtube.com/watch?v=6Bmq89PSZ8E
三橋美智也さんが歌うカバー曲『山は夕焼』
https://www.youtube.com/watch?time_continue=11&v=MNgI6PXrWXk
(1)
山は夕焼け 麓(ふもと)は小焼け
ひとり とぼとぼ 裾野(すその)に暮れりゃ
吹くな木枯らし 侘(わび)しゅてならぬ
心しみじみ 旅の鳥
(2)
西に東に 仮寝の枕
思い遥(はる)かな ふるさと偲(しの)びゃ
遠い灯りが 恋しゅてならぬ
心しみじみ 里ごころ
(3)
塒(ねぐら)定めぬ はかない旅路
今日も とぼとぼ 枯野(かれの)を辿(たど)りゃ
沈む夕陽が 哀しゅてならぬ
心しみじみ 一つ星
夕暮れが近づいて来るというのに、今日もまた屋根の下で寝る
ことも出来そうにない旅の放浪者が、孤独と寒さと不安と
捨ててきたはずの故郷への郷愁とで、哀しくてならない・・。
多分 そんな意味のような歌だと思うと、ふと 種田 山頭火の
「句」を思い出した。

六兵衛が以前 作っていた「大衆娯楽小説は文庫本で」というブログの中の2013年
の晩春の頃に「さし絵」として掲載していた158作目のカット絵。
「 分け入つても 分け入つても 青い山 」
「 この旅 果もない旅の つくつくぼうし 」
「 どうしようもない わたしが歩いてゐる 」
「 物乞ふ家もなくなり 山には雲 」・・等々、等々。
種田 山頭火という人の生き方や、作った句などの
詳しい事は ほとんど知らない六兵衛なのだが
ただ 以前、孫たちが まだ小さかった頃に
「大衆娯楽小説は文庫本で」というブログの挿絵にするために
描いていたカット絵の登場人物として、フーテンの寅さんや
文豪の芥川さんなどと一緒に、山頭火さんにも登場して
もらったときに、山頭火さんの生き方の一部分や
創作された「句」を少しだけ知る機会があった。

六兵衛が以前 作っていた「大衆娯楽小説は文庫本で」というブログの中の
2013年の初夏の頃に「さし絵」として掲載していた160作目のカット絵。
散歩の時、三橋美智也さんが歌う『山は夕焼』の歌詞が
耳に入ってきたとき、わずかに知る山頭火さんの心情は
この歌詞のようだったのではないか・・などと思いついて
散歩から帰ってネットで調べてみたが
この『山は夕焼』という歌の詳しい事は ほとんど分からず
この歌と山頭火さんとの繋がりを見つけることは
出来なかった。
それと、この歌の事で もう一つヒントがあって・・
この歌を「YouTube」へ投稿された方々の説明文の中に
「昭和09年(1934年) キング(キンポリ盤)流行歌 編集発行所:
大日本雄辯會講談社」とか
「昭和09年(1934年) キンポリ 流行歌 松竹映画「忍術千一夜」
主題歌」・・とかの文言を記してあるのを見つけたので
それらの事も調べられるだけ調べてみた。
だから 話は長くなる・・。
( 面倒くさがったらアカン! ボケ防止や! ボケ防止!)
戦前に「大日本雄辯會講談社(現:講談社)」から『キング』
という雑誌が出版されていたという。
そして、「大日本雄辯會講談社」が「キングレコード」という
レコード会社を発足して、東海林太郎さんが歌う『山は夕焼け』
という歌を発売した・・と云うことは分かったが
どういう経緯があって、この歌の情景が出来たのかに繋がる
ヒントは何も分からなかった。
また、『松竹映画「忍術千一夜」 主題歌』とも書いてあり
この歌と忍術とは結びつかない・・と思いながらも
念の為に この事もネットで調べてみた。
1947年に松竹から『猿飛佐助 忍術千一夜』という
高田浩吉さんや月丘夢路さんなどが出演された映画が作られて
いているらしいが、制作が1947年という事で
六兵衛が まだ生まれたばかりの頃の映画のようだが
目的の歌『山は夕焼』との接点は 見つけられない。
もう一つ、大都映画社が1939年に制作した『忍術千一夜』
という近衛十四郎さんと水川八重子さんが主演した忍術映画も
調べたが、「 軽妙なパロディー要素を取り入れた忍術映画」
などの説明があったのみで、この映画も『山は夕焼』との
接点は考えられそうもない。

あるいは あるいは・・
これは あくまでも六兵衛の想像なのではあるが
戦前の頃に、狭い日本に飽き足らず、若い男達が大望を抱き
中国大陸などに渡り、放浪をしながら政治活動や馬賊として
活動した、俗に「大陸浪人」と云われた人達の
人には云えぬ心の内の想いを詩った歌なのではないか・・
などとも 考えたりもするのだが・・。
何にしても しんみりと、つい聴き入ってしまう歌なのである・・。