また 読みたくなった・・

六兵衛が30歳代の頃には、時々 推理小説などの本を読む事は

あったが、今のように毎日 文庫本を読む習慣になったのは

六兵衛が60歳くらいの頃だったろうか・・

そのキッカケは 何を思ったか、つれあいが 買ってきて勧めて

くれた荻原浩さんの『神様からひと言』という文庫本だった。

 

その文庫本により、読書の楽しみを 改めて知り

今では 詳しい事は もう忘れてしまっているが

小説を読むなら 藤沢さんの時代小説を まず読みたいと

多分 思ったのだと思う。

テレビなどで見た記憶があった藤沢さんの「獄医・立花登手控え」

「三屋清左衛門残日録」などの小説から始まり「用心棒日月抄」

「彫り師伊之助捕物覚え」など、数冊ずつをネットで購入して

読んでいった。

立花・三屋

そして 藤沢さんには、エッセイ集が数冊 出版されているよう

だが、六兵衛はエッセイには さほど興味がないものだから

エッセイ集 以外の藤沢さんの60冊ほどの文庫本の全部を

順次 読もうと決めた。

 

ただ、一気に全部の藤沢さんの文庫本を読んでしまうと

藤沢さんは すでに亡く、新たな小説が出版されるわけもなく

だから 残った5・6冊を、購入したままで

読まずに残しておいた。

 

そうして残していた文庫本は、その後の何年かの間に1冊

1冊と読んでいき、未読の最後の文庫本は1冊だけになっていた

 

残った最後の1冊は『ふるさとへ廻る六部は』という文庫本で

最後の1冊なのだが、それでも読もうと決め手に取ったら

エッセイ集であった。

あちゃ〜エッセイ集か・・と思ったのだが、最後の最後に残った

藤沢さんの文庫本だから、心を込めて読もうと思った。

 

藤沢さんの子供の頃の事や故郷の話、若い頃に病気で入院

していた状況の話、中・老年に差し掛かった作家生活の事々など

藤沢さんの その時々の想いを綴られたエッセイであった。

その中に「ある思い出」というエッセイがあった。

藤沢さんと同郷の山形県鶴岡市出身の山本甚作さんという

画家が描いた「鶴岡天神祭」という絵が掲載されていた雑誌を

藤沢さんが見て、藤沢さんが まだ子供の頃の遠い昔の「天神祭」の

日に母親と出かけ、道に迷った思い出話を書かれたエッセイを読み

その山本甚作という六兵衛には初めて聞く画家の描いた絵を

見てみたいと思い 、iPadで検索してみた。

 

山本甚作さんは、山形新聞に連載していた藤沢さんの

『蝉しぐれ』の挿絵を描かれていた人だという。

続けてネットを調べていくと、山形新聞に連載されていた

『蝉しぐれ』の挿絵が数枚 出てきた。

そんな挿絵の中に、主人公 牧文四郎が まだ元服をする前の

16歳の頃、父親が御世継ぎ騒動に巻き込まれ切腹をした。

父親の亡骸を文四郎 一人、荷車で城へ引き取りに行った帰り道

周りの人々の嘲りの笑いの中、父親を載せて心も荷車も重く

ヘトヘトになりながら登り坂を引き上げようとする文四郎に

幼馴染の ふくが現れて、一緒に 荷車を引く手助けをしてくれた。

挿絵

 

その場面の挿絵を見て、もう一度『蝉しぐれ』を読みたい要求が

ふつふつと湧いてきて、再読用の本棚から『蝉しぐれ』を取り出し

六兵衛は 今・・読んでいる。