時代は幕末、徳川幕府が倒れ 江戸城明け渡しが迫っているとき
尾張藩士の加倉井 隼人は、官軍の西郷 隆盛と話し合い無血開城を
成し遂げた 元海軍奉行の勝 海舟から
『元 書院番士(将軍の警護役)・的矢 六兵衛という武士が
将軍の居ない江戸城内の「黒書院部屋」に無言で居座っている。
無血開城のため、江戸城から穏便に退出させてほしい』との
命を受けて、無血開城のための先駆けとして江戸城内に入った。

一切の口を利かず、江戸城の奥深くに居座り動かない的矢 六兵衛
とは一体 何者なのか、そして 座り続ける その目的は何か。
物語は、的矢 六兵衛と関わりあった人々から証言を聴き
的矢 六兵衛という男の謎を解明しようとする 一方で
何も語らず 礼儀正しく座ったまま動かない六兵衛の
その凛とした佇まいに 真の武士の姿を見、誰もが六兵衛という
男に魅了されていく。
まぁそんな内容の小説『黒書院の六兵衛(上・下) 』を読んだ。

作者は浅田 次郎さん。
2012年から2013年にかけて日本経済新聞に連載され
2017年に文春文庫から文庫本が出版されている。
何ヶ月も無言で居座る侍の名前が「的矢 六兵衛」という。
六兵衛・・私と同じ名前だ。
改めて云うが、私がホームページやブログを始めた頃には
自分の名前を「K氏」とか「きーポケ」とか名乗っていたのだが
2010年から第1巻が始まり、今では第31巻目も出版されて
いる祥伝社文庫『風に市兵衛』の主人公「唐木 市兵衛」さんに
魅せられ、「当ブログ」を作り始めた時、せめてお名前だけでも
市兵衛さんに あやかりたいと思った。
しかし そのまま「市兵衛」と名乗るのは、あまりにも図々しく
だから せめて 六歩さがって、『六兵衛』と名乗らせて
いただく事とした・・そんな名前の経緯がある。
版画家の卯月みゆきさんが文庫本カバーのイラストを描かれている。
そんな「六兵衛」の名を名乗る当ブログの管理人の「六兵衛」
と同じ「六兵衛」のタイトルが入った この小説に興味が湧き
中古本を探し 購入して読んだのだ。
江戸城を明け渡せば武士の時代は終わる。
その 最後の最後に、これまで江戸城に関わってきた多くの
武士達を代表するかのような、本当の武士(もののふ)の姿を
残して江戸城を去りゆく的矢 六兵衛の背に涙し
同じ六兵衛という名前でも、己との あまりの違いの大きさに
顔を上げる事ができないでいる・・。