諸田玲子さんの文庫本『お鳥見女房・別れの季節』(新潮文庫)を読み終えた。第8巻目、最終巻である。
『江戸時代後期、将軍が軍事訓練の名目で行う鷹狩りの下準備をする役目の「お鳥見役」には、幕府の密偵という裏の役目があった。
江戸郊外、雑司ケ谷のお鳥見役の組屋敷に暮らす矢島家は、当主が任務のため長く旅に出たあとの留守宅を、女房の珠世が切り盛りしている。そんな矢島家に、ある日、沢山の子どもを連れた浪人が押しかけて来る。
その後も さまざまな難題や心配事が起きるが、持ち前の明るさと適切な機転で諸問題を解決していく矢島家の女房・珠世と、その家族たちの物語である。』
連作短編集『お鳥見女房』は、雑誌「小説新潮」に掲載されたあと、2001年には単行本が、2005年には文庫本も発売された。
そして、文庫本での最終巻となる第8巻『お鳥見女房・別れの季節』は、2022年に発売されているように、長い年月をかけて書かれた連作短編集で、諸田玲子さんの代表作のひとつと言えるだろう。
文庫本『お鳥見女房』の全8巻のうちの、第1巻、第2巻、第6巻、第7巻、そして最後の第8巻と「カバー表紙絵」には、主人公の珠世が書かれているのだが(第3巻、第4巻、第5巻の場合は、後に長男・久太郎の嫁になる鷹姫さんが表紙を飾っている・・)、最後の第8巻を手にとって 気がついた事がある・・。
第8巻のカバー表紙絵に描かれている珠世の顔が、それまでの珠世の顔とは 少し違うように描かれていて、それは 年齢を重ねてきた女性を思わせる顔立ちになっていたことだ。
物語が始まった頃は まだ幼かった子供たちも、それぞれが独立をし 子を持つ(珠世にとっては孫)親になっているほどの、20数年の間の長い年月を経た家族の物語なのだから、考えれば 当然なのだろうが・・。
・・と、文庫本『お鳥見女房』の「カバー表紙絵」の事を書いたついでに、この表紙絵を描かれているイラストレーターの深井 国さんという方の話しを少し・・。
六兵衛がまだ中学生だった昭和30年代の貸本漫画が全盛の頃、「深井日郎」とか「深井ヒロー」、「フカイヒロー」などのペンネームで、少し変わった絵柄の(子供の六兵衛には そう思えた)漫画を描いておられた方が『お鳥見女房』のカバー表紙絵を描いておられるのだが、このカバー表紙絵の絵柄に、昔の深井さんの漫画絵を思い出させる何かがある・・。
そんな こんな 今日も、六兵衛の他愛もない独り言である・・。