市兵衛さんの出自が・・

現在出版されている多くの娯楽小説の中で きーポケが最も好きな

『風の市兵衛シリーズ』(辻堂魁さん作)は

昨年の夏に出版された第20巻目の『風の市兵衛・架け橋』で

シリーズは終了した。

 

・・・と思っていたら 嬉しいことに、半年後の今年の2月に

新しいシリーズ『風の市兵衛 弐』が始まった。

 

ところで、これまで続いて来た『風の市兵衛シリーズ』全20巻

では、市兵衛さんの出自についての説明は あまり多くなかった。

 

旗本 千五百石 公儀目付役・片岡賢斎の後妻(のちぞえ)に

片岡家に足軽として使える唐木忠左右衛門の娘・市枝を迎え

賢斎と市枝の間に生まれた子が市兵衛さんだが

母・市枝は市兵衛さんを産んで すぐ亡くなってしまったから

市兵衛さんは母親を知らない。

そして市兵衛さんは 片岡家の第四子として育てられた。

 

市兵衛さんが13歳のとき、父親の片岡賢斎が亡くなる。

そのとき 片岡家の足軽・唐木忠左右衛門が市兵衛さんの祖父

だという事を初めて聞かされた。

そして祖父・唐木忠左右衛門は市兵衛さんに言った。

『お前は侍の子だ。お前の父がそうしたように 奈良の興福寺へ行き

おのれの声が聞こえるまで、剣の修行に身をゆだねてみよ。

必ず声は聞こえるだろう・・。』と。

 

祖父の手で元服を終え、片岡才蔵から唐木市兵衛と名を変えて

上方へ上り、奈良の興福寺の門を叩いた。

興福寺で剣の修行を重ね、大阪・堂島では そろばんや商売を

伊丹の酒蔵や米農家では 物を作ることを学び

日本各地を歩いて、35歳のとき江戸に戻って来たのである。

 

シリーズの全20巻を通しても、この程度のことしか市兵衛さんの

出自については語られていない。

 

 

そして 新たに始まったシリーズ『風の市兵衛 弐』の第1巻で

市兵衛さんの母方の出自が明らかになる。

 

奈良吉野山門前の中町に館をかまえ、代々 吉野一山町方の

総取締役を継ぐ地下老分・村尾家の今年119歳になる大婆様に

「江戸の市兵衛を吉野に呼ぶように・・」とのお告げが降りた。

一人の修験者が江戸に来て市兵衛さんを探し出し

『吉野に来るように・・』と告げる。

すぐさま吉野に出向いた市兵衛さんは、村尾家の大婆様に会い

自分の出自を知ることになる。

 

それは60有余年前・・

南都の本仏師としての家に生まれ、その生業を営みつつ

大嶺奥駈をする若い修験者がいた。

のちに市兵衛さんの祖父となる若き頃の唐木忠左右衛門である。

吉野山門前の中町に館を構え、代々 吉野一山町方の総年寄役を

継ぐ地下老分・村尾家の娘・梢花と恋に落ちた唐木忠左右衛門は

許されぬ恋に二人で手に手を取り駆け落ちをして江戸に出る。

忠左右衛門は奈良・興福寺で共に剣の修行をしたことのある

剣友、千五百石の旗本・片岡賢斎の足軽となり

梢花は市兵衛さんの母親となる市枝を産むが

梢花は亡くなってしまう。

市兵衛さんの母方の先祖が、奈良吉野の総年寄役の

地下老分・村尾家だと分かって江戸に戻った市兵衛さんは

江戸の町で殺しを請け負う浪人・信夫平八を倒し

その信夫の二人の幼い遺児を引き取り新しい暮らしが始まる・・。

 

『風の市兵衛 弐 第2巻・修羅の契り』も『第3巻・銀花』も

すでに出版されているのだが、中古本としての値段が¥400とか

¥500とかでは、まだ きーポケには手が出ない現状なのである。