江戸古地図で・・

「 侍は、三河町三丁目の往来から、二丁目との境を東へのびる

通りへ曲がった。

その通りは、三河町から東へ内神田の町家をゆき、

横大工町をすぎ、竪大工町と田町一丁目の境、

鍋町西横丁、鍛冶町二丁目と鍋町の境を抜けると、

日本橋と筋違見附の八辻ヶ原を結ぶ大通りに出られる。

しかし、侍は 竪大工町と田町一丁目の辻の

半丁(約54・5メートル)手前にある横大工町の辻で

方向を転じ、蝉の声が聞こえる夏の朝に似合った

のどかな歩みを北へとった。

横大工町の北隣が銀町で、銀町の往来の東側に、

青物役所の《御納屋》が瓦葺屋根の二階家をかまえている。」

 

辻堂魁さんの時代小説『風の市兵衛 シリーズ』が20巻で終わり

その続編ともいうべき新しい企画で始まった『風の市兵衛 弐 』の

その第1巻目の出だしの部分の文章である。

 

この文章に登場する「侍」とは

もちろん、我が主人公「唐木 市兵衛」さんのことだ。

今回の市兵衛さんの仕事は

江戸の青果を一手に商っている青物役所の《御納屋》での

そろばん仕事を引き受けることになり

市兵衛さんが その青物役所の《御納屋》へ初めて向かって歩く

路なりを表現した文章である。

 

いつもの事だが また、市兵衛さんの歩く道筋を

江戸古地図を見ながら なぞってみる。

 

市兵衛さんが住んでいる長屋は「雉子町」にある。

上の地図の橙色の◯で示した辺りだ。

 

「雉子町」の長屋を出た市兵衛さんは

文章が表現し始めている 辺り(①)を通って

赤線で示した道程を青物役所の《御納屋》まで歩いている。

 

ところが ここで きーポケには少し疑問がわく・・。

長屋のある「雉子町」から歩き始めて

青物役所の《御納屋》へ行くのなら

三河町三丁目辺りの辻まで行かずとも、一つ手前の

三河町四丁目の辻を東に折れて銀町に挟まれた角を

南へと右折する方が 近道になるはずなのだが・・と。

 

はて さて 市兵衛さんは、雉子町にある自分の長屋から

「青物役所」へ向かったのではない・・とも考えられるし

・・などと

小説には表現されてないが市兵衛さんの歩く道すがらなどを

地図上で やあれこれやと想像をするのは なんとも楽しい。


拡大した古地図。

 

そして、青物役所の《御納屋》は地図でわかる通り

「雉子町」のすぐ近くに在るのだが、この辺りは

これまでの市兵衛さんの生活範囲ではなかったらしく

自分が暮らす長屋の こんな近くに「青物役所」が在ることを

知らなかったなぁ・・と

市兵衛さんは のんびりと そんな風に思いながら

仕事始めの挨拶のために「青物役所」へ向かうのである。

 

きーポケの独りよがりなのだが

古地図で 町の周りの様子を見ながら

市兵衛さんの跡をついて歩く・・やはり 楽しい。

 

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