映画『乱れる』

前々回の日記で、成瀬巳喜男監督の映画『乱れ雲』に触れたが

その映画より4年前に制作されている 同じ成瀬監督の映画に

『乱れる』という作品がある。

『乱れ雲』は1967年の制作だが、『乱れる』はその4年前

の1963年に制作されていて、高峰秀子さんと加山雄三さん

主演の、こちらも東宝配給の映画だった。

 

夫の死後 残された酒屋を支え、明るくひたむきに店を切り盛り

する女性(高峰秀子)と、その義姉を一途に慕い続ける義弟

(加山雄三)との、許されない愛を描いた物語である。

 

寡婦となった義姉を慕い続ける義弟の一途な想いを告白され

義弟を憎からず思う義姉の心は揺れる・・。

元々 家を出る決意は固く、嫁ぎ先に別れを告げ汽車に乗り

故郷へ帰る列車の中で、追ってきた義弟と一緒になる。

フッと 二人が途中下車したのは、川沿いに並ぶ温泉宿・・。

 

この二つの映画、どちらも 若い青年の一途な愛に心が乱れる

年上の女性の葛藤を描いている。

『乱れる』では、戦争で死んだ夫の弟との情愛であり

『乱れ雲』の場合は、夫が死ぬ事故を起こした相手との情愛

なのである。

それぞれに、単純に愛を受け入れる事が出来ない相手なのだ。

 

前作となる『乱れる』での結末が、どうにも救われないような

ショッキングで暗い結末で終わっているが、4年後の『乱れ雲』

では、同じようなテーマにみえるが 結末は少し異なっている。

多少の時代の変化だとか、監督自身の思惑に何かが あったのか

何にしても、同じ様な二つの映画を数年の間に作ったその意味を

柄にもなく考えてみるのだった・・。

 

いくら純粋な愛であろうと、許されない形の愛の その先には

しあわせや、特に心の平安は 長続きしないのではないか。

何故なら その愛には、無理のある事を 当人たちが 一番よく

分かっていて、それを意識すればするほど 壊れてしまう脆さが

あったように思える。

二つの映画の結末に多少の違いはあるものの

どちらもハッピーエンドに終わらせなかったのは

そんな思惑が監督に あったのではないか。

・・などと単純な六兵衛は、精一杯 考えても

この程度の想像が 限界なので・・ある。

 

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