春香伝

きーポケの散歩のお供は いつも
昔の流行歌を聴きながら歩くことだと 以前の記事に書いた。

戦前や戦後の、昭和10年頃から30年あたりまでの
蓄音機やラジオから流れていたであろう流行歌の数々である。

それらの歌は きーポケが子供の頃に
なんとなく耳にしていた歌もあれば
この歳になって 初めて聴く歌もある。

「YouTube」から「iphone」内のアプリ「OPlayer Lite」に
保存のためにダウンロードしている150曲余りの
いろいろな昔の流行歌を、歩く毎に順繰りに聴いている。

そんな昔の流行歌のなかに『なんか古臭いなぁ・・』と
聴きながら いつも思っていた歌がある。

曲や歌詞の言葉などが 何となく どこか異国の歌のような
日本の歌っぽくない感じがしていた程度で
特に深く考えもなく聴き流していたが、何度も聴くうちに
なんだか この頃 この歌の、詩を朗読するかのような歌い方や
台詞を歌うように語る若い頃の田中絹代さんの、やや甲高く
頼りなげな声などに、親しみさえ感じている自分に気がついた。

それが 『春香伝』という歌だ。

歌うのは上原 敏さん、のちに大女優といわれた田中絹代さんの
台詞が、この歌の雰囲気をより盛り上げている。
作詞:ゆざわ よしお さん、作曲:服部逸郎 さんという方々
POLYDOR(ポリドール)蓄音機という会社から
1939年・昭和14年にレコードが発売されている。

YouTubeの歌声

『春香伝』の歌詞・・

1)
桃咲く園の 夕まぐれ
仮寝に結ぶ 夢浅く
けむる高楼(たかどの)飛燕(つばくろ)に
誓いし恋も 陽炎か
あゝ儚しや 広寒楼(こうかんろう)

「田中絹代さんのセリフ」
お別れの形見に戴いた このお鏡に
優しいお姿を映し出しては
じっと抱きしめている この春香(しゅんこう・娘の名前)
あの広寒楼の お堀に
美しく蓮の花が咲いては
悲しく散っていったことも
思えば もう幾度になりましょう
それなのに あなた様からの お迎えは・・』

2)
別れの盃(はい)は 乾くとも
さだめし君は ただ独り
吹くな秋風 五里亭(ごりてい)に
しぐれて咽ぶ(むせぶ) 姫小松
あゝ峠道を 驢馬(ろば)はゆく

「田中絹代さんのセリフ」
夢龍さま、夢龍さま
春香の小さい胸は いまにも
張り裂けそうでございます・・
春香の鳴き声が・・』

この歌のことを ネットでちょっと調べてみた。
この歌の元となる物語は、韓国古典の傑作といわれる
李朝時代の説話から作られた物語だという。

南原府使(南原地方の知事のような人)の息子・夢龍は
妓生(舞子さんか芸者さんのような仕事をする女性)の
春香を広寒楼で見初め、お互いに愛し合うようになる。
しかし 夢龍の父親の府使の任期が終わり、夢龍は漢陽(現在の
ソウル)に帰ることになる。
愛し合う夢龍と春香は かたく再開を誓って別れるが
南原に新たに赴任してきた府使は、春香の美貌を知って
言い寄ってくる。
しかし 春香は夢龍への貞節を守り、決して府使に従おうとはせず
激怒した府使は春香を投獄してしまう。
一方 夢龍は 試験に合格して役人になり、暗行御使(隠密の役人)
として南原に潜入し、悪徳府使の悪事を暴き 春香を救い出し
二人は末長く幸せに暮らしたという。

 

注)広寒楼・・韓国 全羅北道 南原市にある観光地。
主人公の二人が
初めて会った場所。

注)五里亭・・台湾の高雄市にある水辺に浮かぶ中国式の東屋。
もしかしたら、夢龍が役人になるための勉強をした所かも・・。