『命美し』『南風』『自由学校』『新女性問答』『高原の月』
『懐かしのブルース』等々 とうとう、戦前や戦後すぐの
古い時代の多くの映画を、嬉しい事に今はYouTubeで
わりと簡単に観ることが出来る。
『 どこか・・例えば 信州あたりの高原のような場所にある
旅館か寮か、裏山側に小さな谷川が流れていて
洗濯などが出来るような 庇(ひさし)のある薄暗い通路があり
その建物で働く人達か、もしかしたら旅館の客かもしれない
何人かの若い男女が、何やら話しをしている・・。』

・・六兵衛が まだ子供の頃の、遠い とおい 遥かに遠い昔の
六兵衛が小学校低学年の頃か、もしかしたら それよりもっと
小さい頃だったかもしれない。
もちろんテレビなど 無い時代の映画の一場面だと思うが
そんな映像が今でも消えずに残っている。
太平洋戦争も終わり、軍国主義の時代から開放された
昭和20年代の、貧しくとも自由を謳歌し 青春を満喫し
将来に明るい未来がありそうに思え始めた・・
そんな時代の若者達が躍動する映画の(幼かった当時の六兵衛
には、映画に登場した若者達が 皆 大人に見えたものだが・・)
子供の頃に田舎の映画館で観たであろう一場面の記憶があり
出来る事なら もう一度、その映画を観てみたいと思うのだが
残念ながら その映画の題名も、演じていた役者さんも
監督さんさえ まったく分からないのだから探しようがない。
今は「You Tube」で昔の古い映画を観ることが出来るから
かすかな記憶を辿って あれこれと探しては みるものの
頼りない六兵衛の記憶に残る、そんな場面につながるような
映画には、まだ出会えていない。

例えば、中川信夫監督の作品で1956年に制作された
新東宝映画『高原の駅よさようなら』という水島道太郎さんと
香川京子さん主演の映画など、どこかの高原での物語のようで
タイトルを見るだけなら、六兵衛の記憶する映画にぴったりだから
YouTubeで探して この映画を観たが
六兵衛の記憶に残る それらしい場面は出てこず
残念ながら違う映画のようだった・・。

そして もう一つ、川端康成の『山の音』という小説を
成瀬巳喜男監督が1954年に、山村聡さんと原節子さんの主演で
制作した東宝映画がある。
「山の音」・・このタイトルも、六兵衛の記憶に残る一場面に
ぴったりの映画ではないかと期待をさせた。
しかし この映画、YouTubeでは観ることが出来ない。
だから他のサイトで、その映画のあらすじ等を調べてみると
「山の音」というタイトルの意味は、老いを感じ始めた初老の
主人公が、老いる事への不安を表しているということだし
初老の主人公(山村聡)が、自分の息子(上原謙)の嫁
(原節子)に淡い恋情を持つという内容のようで
六兵衛が昔 観た映画の印象とは、いささか違う内容のようだ。
はてさて、頼りない一場面だけが記憶に残る古い映画を
探し当てることは、どうにも難しいようである。
・・とは言え 案外 誰にでも、多かれ少なかれ形は違えど
心の片隅に、かすかに残る記憶の欠片のようなものを
持っていたりするのではなかろうか・・。