年の初めに読んだ文庫本

北方謙三、船戸与一、佐々木譲、宮部みゆき、大沢在昌 等々

「冒険小説」とか「ハードボイルド小説」などと言われる

ジャンルの小説を書かれる多くの作家の一人に志水辰夫という

人がいる。

 

世間では、その独特な文体を「シミタツ節」といって

志水辰夫さんの小説の特徴(持ち味・・)なのだと云う。

六兵衛には そんな文体の云々など、難しくて わからなく

ただ単純に 志水さんの冒険小説は「面白い!」と

ありふれた言葉で思うくらいしか表現できないのだが・・。

 

そして、志水さんの冒険小説に登場する主人公といえば

特に頭が良いとか 力が強いとかいったスーパーマンではなく

ましてや腕利きの刑事や名探偵などでもなく

そこら辺りに居る普通の男たちが 、何らかの事件に

巻き込まれて必死に頑張るという設定である。

 

ず〜っと以前、志水さんの文庫本『飢えて狼』を初めて読んで

それが とても面白くて、『裂けて海峡』『背いて故郷』などの

初期の頃の志水さんの冒険小説を続けて読んだ。

どれもこれも とても面白く、大好きな小説家の一人になり

それ以後も 志水さんの冒険小説を立て続けに読んだ。

( もちろん今でも、中古で買った志水辰夫さんの文庫本は

    再読用の本棚に並んでいる。)

 

それまで現代小説ばかりを執筆されていた志水さんが

文庫本でいうと2009年に新潮文庫から出版された

『青に候』以後は、時代小説ばかりの執筆が続いている。

 

しかし 六兵衛は時代小説は大好きだが、志水さんが書き始めた

時代小説には、今ひとつ面白さを感じられなかった。

 

『青に候』『みのたけの春』と続く時代小説は

侍として人としての 誇りや進むべき道に迷い悩む 名もなき

青年たちの青春群像にスポットを当てた小説が多かったが

何となく物語が暗く、読んでいてさほど楽しくもなく

単純な六兵衛の好みの小説からは遠く

過去の志水さんの現代小説を読んた時のワクワク感や

面白さを、楽しむ事が出来なかった。

 

昨年の2月頃に文庫本で『疾れ、新蔵』という時代小説が

徳間文庫より発売された事を知った。

 

あらすじを読んでみると、これまで続いてきた やや暗い

イメージの時代小説とは少し違うようで

志水さんが以前に書いていた冒険小説を時代小説にした

ような印象を受けたので、中古本として購入出来るくらいの

金額になるまで待っていたのだが、年末になって やっと

中古の文庫本として購入 出来た。

正月には孫たちが遊びに来ていたが、孫たちと遊ぶ合間に

志水さんの時代小説『疾れ、新蔵』を読んだ。

 

越後 岩船藩の森番の新蔵は、権力争いのため身に危険が迫った

10歳の志保姫を 江戸の中屋敷から密かに連れ出し

姫の故郷の越後の母親の許へ送り届ける役目を言付かった。

凶暴な浪人の兄弟も加わった江戸藩邸の追手に追われながら

二人を助ける駕籠かきの政吉と銀治、途中から逃避行に加わる

謎の女おふさ達が加わった新蔵一行は

過酷な逃避行を余儀なくされるが・・。

まるで 志水さんの初期作品のような力強い冒険小説を

時代物に置き換えたような展開で、まさに六兵衛好みの

時代小説であった。

 

『疾れ、新蔵』の続編として執筆された『新蔵、唐行き』が

昨年の秋に単行本として出版されたという。

海難事故で行方不明になった主家の若旦那を捜し

阿片戦争が始まろうとしている波乱の唐の国へと渡る・・

そんな物語だという。

単行本の発売から2、3年後に文庫本が出版されて

それから中古本として六兵衛が購入できる金額になるまで

まだまだ 遠い、トオイ、とおい・・。