「それ」

ボーっと 窓の外を眺める・・。

いつもの 見慣れている 何気ない風景がある・・。

 

多分「それ」は、だいぶ前から そこに あったようにも思うが

だからといって「それ」を、特別に意識したことは

これまで なかった・・。

「それ」は自然に出来上がったものではなく

人の手によって、作為的に作られたものだ・・とはいえ

これまで「それ」の存在の意味を、深く考えた事もなく

ただ ボーっと「それ」を含めた窓の外の景色を

日々 眺めてきた・・。

何気に昨日、「それ」に目が行き、その場所から少し手前に

目を移すと、川を挟んだ こちら側にも「それ」と同じ

「それ」がある。

 

2個あれば 3個目もある・・というのが、わりと世の常識で

最初の「それ」の場所から、少し右横に目を移せば やはり

3個目の「それ」が存在した。

 

 

・・いや 正確に言えば、毎日のように、この窓から外の景色を

眺めているのだから、「それ」が 2つも3つもあることは

無意識ながら目の中に入っていた。

ただ これまで「それ」の存在に、特に疑問も持たず

景色の一部としての、意識の外の「それ」であった。

 

「それ」とは、我が家の前を流れる小さな川・如是川を挟んだ

両側を通る片側通行道のガードレールやフェンスに結び付け

られた紐状の「ピンク色のリボン」のことである。

2箇所

右に転ずれば

 

改めて意識して見てみると、何かの意味がありそうな・・。

「まじない」か・・。

それとも「呪い」か・・誰が? 誰に?

窃盗団かスパイ団かが、後日のためのマーキングか?

だとしたら 何を盗む?・・ただの小さな「川」で。

 

想像力の貧弱な六兵衛には、たかがこの程度の発想しか出来ず

いつしか色あせてゆくだろう「ピンク色のリボン」のように

六兵衛の意識からも、「ピンク色のリボン」の疑問も

次第に薄れていくのだろう・・・。